氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 引き()れたような声を上げて、ミヒャエルは無理やり意識を戻された。押さえる片腕からは血が滴り落ちている。女神にたまわった紅玉の指輪も、あの一瞬で砕け落ちてしまった。

「マルグリット・ラウエンシュタイン……」

 圧倒的な女神の力をも簡単に押し戻された。それこそ赤子の腕をひねるかのように。

「なぜだ……あの女は龍の(にえ)になったはずだ……」

 呆然自失で立ち尽くすも、王城が鎮圧されていく様子が伝わってきた。忌々しいことにバルバナスが到着したようだ。

「女神に……女神にご報告さしあげねば……」

 配下の貴族たちの記憶は消してある。捕らえられたところで、騎士団がこの自分にたどり着くことはないだろう。今はこの場を去るのが得策だ。未来の王たる自分が、ここで捕まるわけにはいかなかった。

 ぶらりと動かぬ腕をかばいながら、ミヒャエルは神殿へとひとり目指した。

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