氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
夫人が半ば叫びながら顔を上げると、そこには黒い騎士服を着た近衛騎士が立っていた。黒髪の青い瞳のなかなか顔の整った青年だ。夫の肩越しにその騎士と目を合わせた夫人は、ヘビに睨まれたカエルのごとく、喉の奥を引きつらせた。
黒髪の騎士――ジークヴァルトが無言のまま見下ろすと、ふたりはふるふる首を振って、脂汗を流しながらじりじりと後退り始めた。ある程度距離を取ったかと思うと、そのまま脱兎のごとく逃げ出していく。
ジークヴァルトは常に異形に狙われる身であるため、幼少期から無意識に殺気を張り巡らせている。それを常人が目の当たりにすると、得体のしれない恐怖に見舞われるらしい。
(あいかわらずジークヴァルト様は、安定の防御壁だな)
最後尾で王子の護衛をしていたカイは、そんな光景をのんびりとした様子で眺めていた。
ともすれば王よりも多い護衛に囲まれて、王子が扉の向こうに消えていく。近くまで詰め寄っていた貴族たちから落胆の声が上がった。
「王太子殿下は本当に気難しくていらっしゃる……」
「女嫌いと有名だが、やはり噂の通りそちらのご趣味がおありなのでは……」
「フーゲンベルク公爵様を筆頭に、今日も大勢の近衛の騎士を取り巻いておいででしたものね」
密やかに噂話に花が咲く。王族用の出入り口の扉が閉ざされ、貴族たちは諦めたように次々に帰路へとつくのだった。
黒髪の騎士――ジークヴァルトが無言のまま見下ろすと、ふたりはふるふる首を振って、脂汗を流しながらじりじりと後退り始めた。ある程度距離を取ったかと思うと、そのまま脱兎のごとく逃げ出していく。
ジークヴァルトは常に異形に狙われる身であるため、幼少期から無意識に殺気を張り巡らせている。それを常人が目の当たりにすると、得体のしれない恐怖に見舞われるらしい。
(あいかわらずジークヴァルト様は、安定の防御壁だな)
最後尾で王子の護衛をしていたカイは、そんな光景をのんびりとした様子で眺めていた。
ともすれば王よりも多い護衛に囲まれて、王子が扉の向こうに消えていく。近くまで詰め寄っていた貴族たちから落胆の声が上がった。
「王太子殿下は本当に気難しくていらっしゃる……」
「女嫌いと有名だが、やはり噂の通りそちらのご趣味がおありなのでは……」
「フーゲンベルク公爵様を筆頭に、今日も大勢の近衛の騎士を取り巻いておいででしたものね」
密やかに噂話に花が咲く。王族用の出入り口の扉が閉ざされ、貴族たちは諦めたように次々に帰路へとつくのだった。