氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「で、話とは何だったのだ? カイに用があったと聞いたが」

 ジークヴァルトもこの晩餐の席が、リーゼロッテが本当に望むものとは思ってはいないらしい。特に隠す理由があるわけではないので、アンネマリーに頼みごとをされたことをリーゼロッテは素直に話した。

「初めはヴァルト様にお願いして、カイ様に届けていただこうと思っていたのです」
「そうか」

 先ほどのやり取りで、リーゼロッテの緊張はすっかりほどけていた。アルコールが入っているわけではないのに、場の雰囲気に少し酔っているのかもしれない。

「ヴァルト様。白の夜会ではわたくしと踊っていただけますか?」

 そんな言葉もするりと出てきた。デビューの夜会のファーストダンスは、身内の男性と踊るのが決まりなので、リーゼロッテは義父のフーゴと踊る予定だ。それが済んだ後は、誰と踊っても構わないことになっている。

 ジークヴァルトは無表情でリーゼロッテの顔を見つめた。

「むしろお前は、ダーミッシュ伯爵とオレ以外とは踊らない方がいい。……行けば分かると思うが、人が集まる場所には異形の者も集まりやすい。舞踏会ではオレか伯爵か、必ずどちらかのそばにいろ」
「まあ、そうなのですね。……では、カイ様となら踊ってもかまいませんか?」

 異形の者が問題というならば、異形を(はら)う力を持つカイが相手ならば大丈夫だろうか? 他意はなく何気(なにげ)なく聞いてみただけなのだが、一瞬、ジークヴァルトの眉間にしわがよった。

「……カイなら……別に、かまわない」

 無表情に戻ったジークヴァルトはそう言って、グラスの液体を一気にあおった。すかさずエッカルトがグラスに果実水を注ぐ。それをまたジークヴァルトはすぐにぐいと飲みほした。

「……旦那様」

 非難めいた声音のエッカルトに、ジークヴァルトは諦めたようにグラスから手を離した。

「いや、やはり駄目だ。白の夜会ではダーミッシュ伯爵とオレ以外とは踊るな」
「はい……承知しましたわ」

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