さくらびと。 恋 番外編(3)
「梓お疲れ様、すごい人だよね」
人だかりをかき分けようとした時、吉岡さんが近づいてきた。
「桜井さん!みた見た?すごいことになってるよー」
「え?」
驚いた蕾が掲示板に目を向けると、そこには各部署への異動命令がびっしりと並んでいた。
中には名前が大きく赤字で強調されている看護師もいる。
「赤字は……」
「主任昇格のメンバーみたい」吉岡さんが小さく囁いた。
「あ、松村師長……慢性期病棟になるんだ」
そこには上司の異動もつらつら書かれていた。
蕾は息を呑んでリストを上から下まで眺めた。
自分の名前を探す指先が微かに震えている。そして—。