さくらびと。 恋 番外編(3)

第5章 夏、発表。






蝉の声が耳につく季節。
中庭の桜の木はミドリで覆い茂っていた。








その日は空気が張り詰めていた。八月末、いつもより早く病棟に到着した蕾は、エレベーターを降りた瞬間にそれを感じ取った。






廊下の一角に人だかりができている——








異動リストが今日掲示されたのだ。







「やばい……今日発表だったっけ?」








小さな呟きが背後から聞こえた。振り返ると同僚の梓が青ざめた顔で立っている。






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