さくらびと。 恋 番外編(3)






「桜井 蕾です。急性期病棟で働いて5年目です。まだ至らない所があるかと思いますが、精一杯努力していきたいと思います」







当たり障りのない挨拶の後、少し間が開いた。






どう続ければいいか迷っていると、有澤先生が意外な行動に出た。








「桜井さんは……」穏やかな声で補足を始めた。










「彼女は常に冷静で丁寧な対応が特徴です。患者さんの小さな変化にも気づきやすいですし、困っている職員にはすぐに手を貸してくれるでしょう」






まさかこんな風に言ってもらえるとは思わなかった。顔が熱くなるのを感じながら俯く。







「また人当たりが良くコミュニケーション能力が高いので、患者さんや家族の方からも評判がいいと聞いています。もちろん改善すべき点もありますが……」







そこで言葉を選ぶように一瞬だけ言葉を止めた後、







「新しい病棟の一員として、これからも活躍を期待しています」






温かい拍手が起こった。






照れ臭さと嬉しさで胸がいっぱいになりながら席につく。






隣の吉岡さんが満面の笑みで「良かったじゃん」と囁いた。







ふと気づくと有澤先生と再び目が合った。今度は意地悪そうに片眉を上げて微笑まれる。






その様子にだんだんと顔が赤くなる蕾だった。






(なんだか……余計に意識してしまう)




(ていうか、先生、こんなに喋って大丈夫なの…?また私達、色々言われないかな…)




(なんか、有澤先生が桜井さんのことは、俺が一番知ってるよ? って遠回して言われているみたい……猛烈に恥ずかしい……)





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