さくらびと。 恋 番外編(3)
点滴が終わり、有澤先生はようやく目を覚ました。
「先生……?」
蕾がそっと肩を叩くと、彼はゆっくりと目を開けた。
その表情は、先ほどよりも幾分か穏やかになっていた。
「ああ、桜井さんか...」
「はい、気分はいかがですか?」
「うん。楽になったよ。ありがとう、点滴してくれて」
有澤先生は、かすかに微笑んで蕾に礼を言った。
蕾は、彼が眠っている間に魘されていたことが気になり、そっと尋ねた。
「あの、先生。眠っている間、少し魘されていたようですが...大丈夫ですか?」
「...ああ。少し、変な夢でも見ていたみたいだ。」
有澤先生は、そう答えるだけで、それ以上は何も語らなかった。
蕾は、彼の言葉の裏にあるものを察しながらも、それ以上は詮索しなかった。