さくらびと。 恋 番外編(3)
第8章 春、蕾は花開く。
季節が巡り、再び桜の季節が訪れた。
病院の中庭にある古い桜の木は今年も美しく花を咲かせている。
満開の花の下に二人は立っていた。
「また今年も、有澤先生と観ることができました……」
蕾がつぶやくと、有澤先生も頷く。
「もう一年か」
時間の早さに驚くように呟いた言葉に、蕾は胸が痛んだ。
この一年、二人の間には微妙な距離が保たれていた。
時には親密さを感じる瞬間もありながら、決定的な一歩を踏み出すことはなかった。
風が吹き、桜の花びらが舞い散る中、蕾は決意を固める。
「有澤先生。」
真剣な呼びかけに、有澤先生は振り向いた。
「あの……」
深呼吸をして言葉を紡ぐ。
「私……」
一旦言葉を切る。この先を言うべきか迷う気持ちが湧き上がる。でももう引き返せない。
「私は……亡くなった奥さんをずっと想っているそのままの有澤先生を望んでいます。」
意外な言葉に有澤先生の表情が固まる。
「あ、その……変な意味じゃないんです。ただ、先生が過去の奥さんとの思い出を大切にしている姿が、純粋に素敵だなってずっと思ってました。有澤先生に、ずっと自然体のままでいてほしいって。」
言葉を探りながら続ける。
病院の中庭にある古い桜の木は今年も美しく花を咲かせている。
満開の花の下に二人は立っていた。
「また今年も、有澤先生と観ることができました……」
蕾がつぶやくと、有澤先生も頷く。
「もう一年か」
時間の早さに驚くように呟いた言葉に、蕾は胸が痛んだ。
この一年、二人の間には微妙な距離が保たれていた。
時には親密さを感じる瞬間もありながら、決定的な一歩を踏み出すことはなかった。
風が吹き、桜の花びらが舞い散る中、蕾は決意を固める。
「有澤先生。」
真剣な呼びかけに、有澤先生は振り向いた。
「あの……」
深呼吸をして言葉を紡ぐ。
「私……」
一旦言葉を切る。この先を言うべきか迷う気持ちが湧き上がる。でももう引き返せない。
「私は……亡くなった奥さんをずっと想っているそのままの有澤先生を望んでいます。」
意外な言葉に有澤先生の表情が固まる。
「あ、その……変な意味じゃないんです。ただ、先生が過去の奥さんとの思い出を大切にしている姿が、純粋に素敵だなってずっと思ってました。有澤先生に、ずっと自然体のままでいてほしいって。」
言葉を探りながら続ける。