寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 おぼつかない足取りで、とてとてと進んでいく。瞳を潤ませながら両腕をまっすぐに伸ばして、ジークヴァルトへとリーゼロッテは前のめりに歩いて行った。やってくるリーゼロッテを受け止めようと、ジークヴァルトの両腕が咄嗟に大きく広げられる。

「リーゼロッテお嬢様?」

 その時、驚いたようなエラの声が響いた。部屋に入ってきたエラの姿を認めると、リーゼロッテの行き先が直角に曲げられた。

「エラ! エラ! 大好きぃ!」

 ててててて、と一直線にリーゼロッテはエラの胸に飛び込んだ。エラ、エラ、と甘えるようにしがみついて、ぎゅうと体を抱きしめる。
 両手を広げたままぽつりと取り残されたジークヴァルトの姿が、なんとも周囲の哀れを誘った。

「お嬢様……? もしかして、お酒をお召しになられましたか?」

 そのエラの一言に、一同は驚いたように顔を見合わせた。

 リーゼロッテはソファの上で、ご機嫌そうにいまだエラにしがみついている。その頭をやさしくなでながら、エラは申し訳なさそうな顔を公爵へと向けた。

 ものすごく恨みがましそうな視線を向けられている。婚約者である公爵を差し置いて、身の置き場がなく感じられたが、可愛いリーゼロッテを勝ち取ったことに、心のどこかでエラは優越感を抱いてしまっていた。

「申し訳ございません。ブランデーを紅茶に一滴たらす程度なら大丈夫かと思ってしまい……」

 そう言ってエマニュエルが深々と頭を下げる。

「この場でのことなら問題ないかと思います。それに量も多くないようですし」

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