寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「王太子妃殿下のお心遣いですわ。どうぞおかけになってくださいませ」
リーゼロッテの顔を見やると、クラーラは先ほど以上にてんぱった様子でがばりと頭を下げた。
「だ、ダーミッシュ伯爵令嬢様っ! せ、先日は夜会でとんだご無礼を働きましたこと、こころよりお詫び申し上げますっ」
「あれはただの事故ですわ。あなたのせいではございません。もうお顔を上げてくださいませ」
手を引きながら椅子に座らせる。すかさず女官がクラーラの前に紅茶を用意した。
カップがカチカチと小さな音を立てている。リーゼロッテがちらりと見ると、その縁に小さな異形の者がへばりついていた。よく見ると、クラーラのドレスの裾を何匹かの小鬼がぎゅっとその手で掴んでいる。
隣に無知なる者であるエラが座っているからだろう。リーゼロッテの方に寄ってきて、それでも守り石のせいで近づけない様子だ。結局はクラーラのスカートの中に潜り込んでは、伺うようにリーゼロッテの方を覗き込む行為を、小鬼は幾度も繰り返している。
(とても他人事とは思えないわ……)
かつての自分の姿を視たような気がして、リーゼロッテは軽く眩暈を覚えた。
『リーゼロッテ嬢はすごい数の小鬼を背負っていたね』
王城で王子に言われた言葉が蘇る。自分もこうして、異形を日々この身に張り付けていたのだろう。もしかしたらもっと多い数を侍らせていたのかもしれない。
身震いをこらえ、リーゼロッテは自身の髪に刺された簪をその手で引き抜いた。揺らめく青い石がついたそれをクラーラの手に握らせる。そこここにいた小鬼たちがジークヴァルトの波動に驚いて、一目散に逃げ散らばっていく。
「こちらは魔よけのお守りですの。お友達になった証として、受け取ってくださいませんか?」
「え? いいえ、こんな高価なもの頂けません!」
恐れ多いと言った様子で、クラーラはそれをリーゼロッテへの手へと押し戻そうとした。
「それは公爵様から頂いたものなんでしょう? そんな大事なものを簡単に他人に下げ渡すなんて、とんでもなく非常識ね」
イザベラが心底馬鹿にしたように言った。アンネマリーは何も言わずに、その場をただ見守っている。
リーゼロッテの顔を見やると、クラーラは先ほど以上にてんぱった様子でがばりと頭を下げた。
「だ、ダーミッシュ伯爵令嬢様っ! せ、先日は夜会でとんだご無礼を働きましたこと、こころよりお詫び申し上げますっ」
「あれはただの事故ですわ。あなたのせいではございません。もうお顔を上げてくださいませ」
手を引きながら椅子に座らせる。すかさず女官がクラーラの前に紅茶を用意した。
カップがカチカチと小さな音を立てている。リーゼロッテがちらりと見ると、その縁に小さな異形の者がへばりついていた。よく見ると、クラーラのドレスの裾を何匹かの小鬼がぎゅっとその手で掴んでいる。
隣に無知なる者であるエラが座っているからだろう。リーゼロッテの方に寄ってきて、それでも守り石のせいで近づけない様子だ。結局はクラーラのスカートの中に潜り込んでは、伺うようにリーゼロッテの方を覗き込む行為を、小鬼は幾度も繰り返している。
(とても他人事とは思えないわ……)
かつての自分の姿を視たような気がして、リーゼロッテは軽く眩暈を覚えた。
『リーゼロッテ嬢はすごい数の小鬼を背負っていたね』
王城で王子に言われた言葉が蘇る。自分もこうして、異形を日々この身に張り付けていたのだろう。もしかしたらもっと多い数を侍らせていたのかもしれない。
身震いをこらえ、リーゼロッテは自身の髪に刺された簪をその手で引き抜いた。揺らめく青い石がついたそれをクラーラの手に握らせる。そこここにいた小鬼たちがジークヴァルトの波動に驚いて、一目散に逃げ散らばっていく。
「こちらは魔よけのお守りですの。お友達になった証として、受け取ってくださいませんか?」
「え? いいえ、こんな高価なもの頂けません!」
恐れ多いと言った様子で、クラーラはそれをリーゼロッテへの手へと押し戻そうとした。
「それは公爵様から頂いたものなんでしょう? そんな大事なものを簡単に他人に下げ渡すなんて、とんでもなく非常識ね」
イザベラが心底馬鹿にしたように言った。アンネマリーは何も言わずに、その場をただ見守っている。