寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「ちょっと! 近づかないでくださる? 不幸がうつるじゃない」
ふいに遠くから言い争いのような声が聞こえた。遠くの円卓を見やると、ひとりの令嬢が数人に言いがかりをつけられている様子だった。しばらくすると、その令嬢ひとりを円卓から追い出し、残った令嬢たちは思い思いにおしゃべりに興じはじめる。ぽつりと残された令嬢は、所在なさげに端の方で佇んでいた。
「あの方は……?」
どこかで見おぼえのある令嬢だ。リーゼロッテが小首をかしげていると、エラもその令嬢を見やりながら少し困った表情をした。
「あの方はクラーラ・へリング子爵令嬢です。白の夜会でリーゼロッテ様の前でお転びになった方でございます」
「あの時の!」
どうりで見たことがある令嬢だと思ったわけだ。深く頷いたリーゼロッテに、エラは声をひそめながら付け加えた。
「クラーラ様にはあるうわさがおありで、ほかのご令嬢たちからあまりよく思われていない様なのです」
「そんな話はわたくしも聞いたことがありますわ。なんでもクラーラ様のそばにいると、不吉なことばかり起こるのだとか。彼女、白の夜会でダンス中に転倒されたでしょう? 妖精姫を巻き添えにしたと、その話に拍車がかかっているようですわ」
「まあ、それはいけませんわね」
ヤスミンの言葉にリーゼロッテは「どうにかならないかしら?」とエラの顔を悲しそうに見上げた。エラにはあの事故は異形の者が原因であると話してある。むしろ彼女は被害者なのだ。真実を知るのに放置するなど、リーゼロッテにはできなかった。
「こちらに呼んでいらっしゃい」
アンネマリーが言うと、控えていた女官がクラーラを円卓まで導いた。新たな椅子が用意され、クラーラはリーゼロッテの横へと座るようにと促される。
「あ、あのっ、王太子妃殿下、今日、じゃなかった、本日はこんないぃえこのような素敵なお茶会にお招きいたたただきまして、まっことありがとうございますっ」
噛み噛みで挨拶をしたクラーラに、イザベラがあからさまな嘲笑を向ける。その笑い声が聞こえなかったふりをして、リーゼロッテはクラーラに微笑みかけた。
ふいに遠くから言い争いのような声が聞こえた。遠くの円卓を見やると、ひとりの令嬢が数人に言いがかりをつけられている様子だった。しばらくすると、その令嬢ひとりを円卓から追い出し、残った令嬢たちは思い思いにおしゃべりに興じはじめる。ぽつりと残された令嬢は、所在なさげに端の方で佇んでいた。
「あの方は……?」
どこかで見おぼえのある令嬢だ。リーゼロッテが小首をかしげていると、エラもその令嬢を見やりながら少し困った表情をした。
「あの方はクラーラ・へリング子爵令嬢です。白の夜会でリーゼロッテ様の前でお転びになった方でございます」
「あの時の!」
どうりで見たことがある令嬢だと思ったわけだ。深く頷いたリーゼロッテに、エラは声をひそめながら付け加えた。
「クラーラ様にはあるうわさがおありで、ほかのご令嬢たちからあまりよく思われていない様なのです」
「そんな話はわたくしも聞いたことがありますわ。なんでもクラーラ様のそばにいると、不吉なことばかり起こるのだとか。彼女、白の夜会でダンス中に転倒されたでしょう? 妖精姫を巻き添えにしたと、その話に拍車がかかっているようですわ」
「まあ、それはいけませんわね」
ヤスミンの言葉にリーゼロッテは「どうにかならないかしら?」とエラの顔を悲しそうに見上げた。エラにはあの事故は異形の者が原因であると話してある。むしろ彼女は被害者なのだ。真実を知るのに放置するなど、リーゼロッテにはできなかった。
「こちらに呼んでいらっしゃい」
アンネマリーが言うと、控えていた女官がクラーラを円卓まで導いた。新たな椅子が用意され、クラーラはリーゼロッテの横へと座るようにと促される。
「あ、あのっ、王太子妃殿下、今日、じゃなかった、本日はこんないぃえこのような素敵なお茶会にお招きいたたただきまして、まっことありがとうございますっ」
噛み噛みで挨拶をしたクラーラに、イザベラがあからさまな嘲笑を向ける。その笑い声が聞こえなかったふりをして、リーゼロッテはクラーラに微笑みかけた。