寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 このままクラーラを放置するのも忍びない。彼女のそばにいると不吉なことが起きるというのなら、それは異形の(さわ)りが原因に違いない。だがイザベラの意見はもっともだと感じたリーゼロッテは、どうしたらいいのだろうと悲しそうな顔をした。

「でしたら次にお会いするときまで、そちらをクラーラ様にお預けすると言うのはいかがでしょうか? 魔よけになる物はそれまでに別に用意して差し上げればよろしいかと」

 エラには守り石の役割を説明してあった。それをクラーラに手渡す理由を、きちんと理解したのだろう。

「そうね、お貸しするだけならジークヴァルト様も許してくださるかしら」
「もし差し上げたとしても、公爵様ならリーゼロッテ様をお責めになることはないと思います」

 隣に座るイザベラから顔をそらして、エラは不満げな口調で言った。先ほどのイザベラの台詞に、ものすごく腹を立てている様子だ。そんなエラをイザベラは親の(かたき)の様に睨みつけた。

「後日、フーゲンベルク家で茶会を開いてみてはどう?」
「お茶会でございますか?」

 アンネマリーの言葉に、リーゼロッテはこてんと首を傾けた。

「公爵にはわたくしからも口添えをしておくわ。へリング子爵令嬢を招けば交遊も深まるでしょう?」
「ええっ!? ですが、そんなわたし、じゃなかったわたくし、ダーミッシュ伯爵令嬢様にそこまでしていただくなんて恐れ多くって」

 あわあわするクラーラの手を取り、もう一度(かんざし)を握らせる。

「リーゼロッテと呼んでくださいませ。せっかくご縁をいただいたのですもの。これからも仲良くしていただけるとうれしいですわ」
「は、はひ……リーゼロッテ様」

 リーゼロッテがふんわりと笑うと、クラーラは真っ赤になってこくこくと頷いた。

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