寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 あとから来た男たちも各々(おのおの)違う花を手にしている。

「「「「よろしくお願いしますっっっ」」」」

 膝に届く勢いで頭を下げ、エラに向けて一斉に花を(かか)げ持つ。絶句してエラは思わず一歩後ずさった。付近にいた使用人たちが興味深げにこちらをみやっていて、一向に顔を上げない男たちを前に、エラも慌てて頭を下げた。

「ごめんなさい! みなさんの気持ちにはお(こた)えできません!」

 その返事に男たちは拍子抜けするほどすぐに頭を上げた。

「お顔を上げてください。オレたち、エラ様を困らせたいわけじゃないので」
「そうです。こんなオレたちにも真摯(しんし)に答えてくださって、エラ様本当にありがとうございます」
「うっう、ボク今日の事、一生の思い出にします」
「残念だけど、エラ様のしあわせをずっと祈ってます!」

 はじめから断られるのがわかっていたような口ぶりで、みなは満足そうに頷いた。そして、エラに向かってもう一度頭を下げ、そのままあっさりと背を向ける。

「あ~あ、やっぱりだめだったかぁ」
「そりゃエラ様だからなぁ」
「ううう、もうこれだけで生きていける」
「いい記念になったなぁ。さらば、オレの青春」

 口々に言うと、手にしていた花を後ろ手にぽいと放り投げた。ぽとりと落ちた花を残して、男たちは遠ざかっていく。エラはその背をただぽかんと見送った。

 周囲の人間が相変わらず自分の動向を見守っているのに気づき、エラは背筋を伸ばして再び歩き出した。早くリーゼロッテを迎えに行かなくては。寄せられる好意はうれしくもあるが、リーゼロッテをそばで一生支えようと改めて決意したばかりだ。

(今は恋にうつつを抜かしている場合ではないわ)

 ひとり頷いて、リーゼロッテの待つ執務室へとエラは急ぎ目指した。

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