寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
困惑顔で見上げるリーゼロッテの腕を引いて、気づくと胸にかき抱いていた。きつく閉じ込めてここから逃したくなくなる。
「ヴァルト様……?」
息苦しそうな声が漏れて出て、慌てて腕の力を緩める。できた隙間から見上げる彼女は、やはり困惑顔のままだった。
彼女に向けられるこの欲望の正体を、自分でもいまだにつかむことができない。だが、得体のしれないこの感情と自分に向けられている彼女のそれに、大きな隔たりがあることだけはジークヴァルトも十二分に理解していた。
「……一体どうしろというのだ」
体の欲に任せて彼女を手に入れたところで、その心は永遠に失われるだろうことはたやすく分かる。裏腹に集まる体の熱に、ジークヴァルトは嫌悪交じりに大きく息を吐いた。
「いいからすぐに鍵をかけろ」
リーゼロッテを引きはがすように再び衣裳部屋へと押しやった。性急に扉を閉めると、今度は程なくして鍵が閉められる。間際に見えた不安げな彼女の表情が、残像の様に脳裏に焼き付いた。
鍵を閉めたところで自分が力を注ぎ込めば、この扉はあっさりと開いてしまう。緊急時に対応するために必要なことだったが、そのことにすら苛立ちを覚える。
扉からリーゼロッテが離れていく気配を感じて、ジークヴァルトは隠し通路へと踵を返した。
「十五分きっかり。さすがですね、旦那様」
執務机からいつも通りの口調で迎えたマテアスを、ジークヴァルトは無言で睨みつけた。
「ヴァルト様……?」
息苦しそうな声が漏れて出て、慌てて腕の力を緩める。できた隙間から見上げる彼女は、やはり困惑顔のままだった。
彼女に向けられるこの欲望の正体を、自分でもいまだにつかむことができない。だが、得体のしれないこの感情と自分に向けられている彼女のそれに、大きな隔たりがあることだけはジークヴァルトも十二分に理解していた。
「……一体どうしろというのだ」
体の欲に任せて彼女を手に入れたところで、その心は永遠に失われるだろうことはたやすく分かる。裏腹に集まる体の熱に、ジークヴァルトは嫌悪交じりに大きく息を吐いた。
「いいからすぐに鍵をかけろ」
リーゼロッテを引きはがすように再び衣裳部屋へと押しやった。性急に扉を閉めると、今度は程なくして鍵が閉められる。間際に見えた不安げな彼女の表情が、残像の様に脳裏に焼き付いた。
鍵を閉めたところで自分が力を注ぎ込めば、この扉はあっさりと開いてしまう。緊急時に対応するために必要なことだったが、そのことにすら苛立ちを覚える。
扉からリーゼロッテが離れていく気配を感じて、ジークヴァルトは隠し通路へと踵を返した。
「十五分きっかり。さすがですね、旦那様」
執務机からいつも通りの口調で迎えたマテアスを、ジークヴァルトは無言で睨みつけた。