寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「うわぁ、なんだかすんごぃことになってますねぇ」
 後ろからベッティがひょっこりと顔をのぞかせた。

「カイ坊ちゃまぁ、わたしひとりじゃ斃死(へいし)しそうなのでぇ一緒に来てくださいましねぇ」

 カイの両腕を肩に(かつ)ぐように引っ張って、ベッティは中へと歩を進めた。

「公爵様ぁお召しにより参上いたしましたよぅ。超絶吐きそうなので手短にぃ」
「傷を」

 短く言われ、ベッティは覗き込むようにリーゼロッテを見た。頬や腕に血のりが残っているが、どこにも傷は見当たらなかった。それを確認すると、無理やり道連れにしたカイを置いて、ベッティはさっと扉の外へと避難した。

「もう傷は()えているようですねぇ。先ほど聖女の力が屋敷中を吹き抜けましたのでぇ、そのとき一緒にご自分を治癒されたのではないでしょうかぁ」

 そう言われてリーゼロッテは自分の腕をまじまじと見た。確かに線状に血が走っているだけで、傷も痛みもまるでなかった。

「というわけで、お帰りはあちらですぅ。ちなみに先ほどの爆風でぇわたしも天国への扉を見ましたよぅ。このままだと本当に扉が開きそうなんでぇ、これ以上はご勘弁くださいましぃ」
「そう思うならオレを置いてかないでよ」

 扉の隙間から目だけをのぞかせているベッティに、呆れたようにカイは言った。

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