寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「開けますよっ!」

 コココココン! と(せわ)しなくノックしてから、返事を待たずにカイは乱暴に扉を開けた。

「一体なにやってくれてるんですか! 危うくオレ死にかけましたよ!」

 部屋の中には予想通りのふたりがいた。真っ赤になったリーゼロッテを膝に乗せ、ジークヴァルトがその口にせっせと菓子を運んでいる。
 口に入れても入れても、リーゼロッテの体からはぽっぽぽっぽと緑の力があふれ出ている。力を消費した分を補うように、ジークヴァルトが嬉々としてその口に菓子を詰め込んでいた。

「あー、もう……」

 とっちらかった室内。熟れたビョウのように頬を染めるリーゼロッテ。今まで見たことのないくらい上機嫌なジークヴァルト。これを掛け合わせれば、(おの)ずと何があったかはわかるというものだ。

(さっきまですごくぎくしゃくした様子だったのに……)

 夜会の会場でのふたりは、遠目に見ても物凄くこじれているようだった。いい感じですれ違っている(さま)をおもしろく見学していたというのに、一体何があったのやらだ。

「カイ、菓子が足りない」
「はいはい、わかりました。ジークヴァルト様、この(たび)は誠におめでとうございます。菓子は公爵家の馬車に詰め込んでおきますので、今すぐとっとと帰ってください」

 このままでは屋敷全体が破壊されそうな勢いだ。ジークヴァルトが頬を撫でさするたびにリーゼロッテが赤くなり、それを見たジークヴァルトが公爵家の呪いを発動させている。リーゼロッテからあふれた力が周囲の異形を瞬殺し、それを先ほどからずっと繰り返している。
 しかもこの部屋は、リーゼロッテの浄化の力が充満していた。扉を開けただけでも気を失いそうだ。

< 359 / 403 >

この作品をシェア

pagetop