寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 執務机の向こうに、頬を紅潮させたリーゼロッテがいる。あの絵のように光輝く笑顔を向け、ジークヴァルトだけをまっすぐに見つめていた。

 書類に滑らせていたペン先が止まる。がたっと椅子を揺らし立ち上がると、ジークヴァルトはリーゼロッテの頭を引き寄せた。
 机越しに唇を重ねる。

「んんんっ!?」

 反射的に身を離そうとしたリーゼロッテの手を石ごと掴み、逃がさないようにと引き寄せる。ドカンと揺れた執務室に、緑の力が広がった。

「ふぉおぉおっ! 昨日の今日で一体何やらかしてるんですかぁっ!!」

 マテアスの絶叫が響き渡る。

 掴まれた手のひらの中、守り石がぶるぶると激しく踊り狂った。重ねられた指の間を縫うように、線状の光がまき散らされる。
 ガッタンガッタンと楽し気に揺れる執務室の中、壁に、天井に、ミラーボールのような光がとめどなく放たれる。

「もう、いいです……お好きなだけやっててください」

 がっくりとうなだれて、マテアスは荒れ狂う執務室を残して出ていった。

 ぱたんと閉められた扉の音を聞きながら、口づけはさらに熱く深まっていく。
 強く引き寄せられたリーゼロッテの足は、もはや完全に浮いてしまっていた。終わりの見えない口づけに、手のひらの中、光の筋を放ち続ける石が、どうしようもないくらいに熱を持つ。


(ばるす、ばるす、ばるすぅぅぅうっ)

 脳内で木魂(こだま)した滅びの言葉は、もちろん発動するわけもなく、リーゼロッテは気を失うまで、ジークヴァルトに唇をむさぼりつくされたのであった。







 寡黙な公爵と託宣の涙 終

▶宿命の王女と身代わりの託宣(龍の託宣4)に続く

        (新規小説で投稿中)





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