寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
(力を注ぎこみすぎているのかも。もう少し中で対流させるようにすれば……)

 今までは石が割れないぎりぎりのところに意識を集中していた。そうではなく、余分な力は外に流せばいいのではないだろうか。そんなふうに考えた時、ふと、ジークヴァルトに手当を(ほどこ)すときの感覚を思い出した。

(今ならうまくできそうな気がするわ)

 リーゼロッテは箱に入れられた最後の守り石を取り出した。練習用にと差し出された中で、いちばん大ぶりな石だった。

 すうと息を吸って瞳を閉じる。腕を(くだ)り、手のひらから流れ出る力に意識を傾けた。石を包み込む手が熱を帯びていく。そうだ。もっと明るく、あたたかい光を。

 一心(いっしん)に願いながら、力の流れに集中した。緑の力は螺旋(らせん)(えが)き、石の中を満たしていく。流れるように、巡るように。その循環がもっとも穏やかになったところで、リーゼロッテはそっと瞳を開いた。
 ゆっくりとこの手のひらを(ほど)いていく。

「――……っ!」

 そこに輝くは、それはそれは美しい守り石だった。幻想的にたゆといながら、緑の光が揺らめいていく。

「ヴァルト様っ!」

 立ち上がり、思わず執務机へと駆け寄った。ジークヴァルトが仕事中だということも忘れて、机越しに緑の石を(かか)げ持つ。

「見てくださいませ! わたくし、こんなに上手に……!」

 背伸びをするように手を伸ばし、リーゼロッテは緑が揺れる守り石を目の前に突き付けた。

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