寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
「チョコレートのアントルメでございます」
「まあ!」
ケーキの上には美しい曲線を描く繊細なチョコレートが飾られ、その脇で赤い木苺が存在を主張している。芸術的に仕上がったホールケーキに、料理長は惜しげもなく長いナイフを入れていく。その熟練の手つきを、リーゼロッテは食い入るように見つめていた。
美しくカットされたピースは大きな平皿に移されて、リーゼロッテの目の前に運ばれた。ケーキの断面はチョコムースとなっていて、ラズベリーソースが心躍るような赤いラインを描いている。
目の前のケーキにくぎ付けとなっていたリーゼロッテは、すでにチョコレートの口になっていた。まさにそれを食そうと手を伸ばした瞬間、部屋にジークヴァルトが現れた。
「ジークヴァルト様!」
途端に我に返った。この席はジークヴァルトの誕生日を祝うために用意してもらったものだ。そんなこともすっかり忘れて、フルコースをばっちり堪能していた自分が恥ずかしく思えてくる。
慌てて立ち上がろうとするのを制されて、リーゼロッテはジークヴァルトが隣の席に座るのを見守った。
「申し訳ございません、わたくし先に……」
「問題ない。オレは適当に済ませてきた」
「え?」
驚くリーゼロッテをしり目に、ジークヴァルトは並べられていたデザート用のカトラリーを手に取った。皿の上のケーキをすくい上げると、迷いなくリーゼロッテの口元に差し出してくる。
「あーん」
面食らったままそれを口に押し込まれた。リーゼロッテの口にちょうどいい量で、適度にラズベリーソースを絡めているところに文句も言い出せない。
口内で広がるチョコムースとラズベリーの酸味が至福のハーモニーを奏でている。そのしあわせを噛み締めるようにほおと息をつくと、続けざまに「あーん」とひとすくいのケーキが差し出されてきた。
せっせと運ばれてくるケーキは、リーゼロッテに口をはさむ余地を与えない。これはジークヴァルトのための祝いの席だ。なぜ、自分ばかりが餌付けされているのか。
納得がいかないまま最後のひとくちを飲み込むと、唇についたソースを白いナプキンでジークヴァルトにぬぐわれた。
「まあ!」
ケーキの上には美しい曲線を描く繊細なチョコレートが飾られ、その脇で赤い木苺が存在を主張している。芸術的に仕上がったホールケーキに、料理長は惜しげもなく長いナイフを入れていく。その熟練の手つきを、リーゼロッテは食い入るように見つめていた。
美しくカットされたピースは大きな平皿に移されて、リーゼロッテの目の前に運ばれた。ケーキの断面はチョコムースとなっていて、ラズベリーソースが心躍るような赤いラインを描いている。
目の前のケーキにくぎ付けとなっていたリーゼロッテは、すでにチョコレートの口になっていた。まさにそれを食そうと手を伸ばした瞬間、部屋にジークヴァルトが現れた。
「ジークヴァルト様!」
途端に我に返った。この席はジークヴァルトの誕生日を祝うために用意してもらったものだ。そんなこともすっかり忘れて、フルコースをばっちり堪能していた自分が恥ずかしく思えてくる。
慌てて立ち上がろうとするのを制されて、リーゼロッテはジークヴァルトが隣の席に座るのを見守った。
「申し訳ございません、わたくし先に……」
「問題ない。オレは適当に済ませてきた」
「え?」
驚くリーゼロッテをしり目に、ジークヴァルトは並べられていたデザート用のカトラリーを手に取った。皿の上のケーキをすくい上げると、迷いなくリーゼロッテの口元に差し出してくる。
「あーん」
面食らったままそれを口に押し込まれた。リーゼロッテの口にちょうどいい量で、適度にラズベリーソースを絡めているところに文句も言い出せない。
口内で広がるチョコムースとラズベリーの酸味が至福のハーモニーを奏でている。そのしあわせを噛み締めるようにほおと息をつくと、続けざまに「あーん」とひとすくいのケーキが差し出されてきた。
せっせと運ばれてくるケーキは、リーゼロッテに口をはさむ余地を与えない。これはジークヴァルトのための祝いの席だ。なぜ、自分ばかりが餌付けされているのか。
納得がいかないまま最後のひとくちを飲み込むと、唇についたソースを白いナプキンでジークヴァルトにぬぐわれた。