寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
だが数か月経っても、ジークヴァルトの様子は相変わらずだ。さすがのマテアスも心配になってくる。時間さえあれば飽きもせずに肖像画を見続ける主に、かける言葉をずっと探していた。
「マテアス、初恋とはなんだ?」
「へ? はつこい?」
考えあぐねていた時に、ジークヴァルトが先に口を開いた。主からそんなワードが飛び出すとは思ってもみなかったマテアスは、その文字を理解するのに数秒を要してしまった。
「初恋とは……はじめての恋のことです」
「はじめての恋? 恋とはなんだ?」
「恋とは、ひとを好きになることですね」
「ひとを好きになる……? では好き、とはなんだ?」
「え? 好き……とは、嫌いの反対のことです」
「嫌いの反対?」
「ヴァルト様は酸っぱいものがお嫌いでしょう?」
「嫌いというか、好きではないだけだ」
「と、とにかく! 嫌いの反対が好きで、嫌いではないということが好きということです!」
六歳のジークヴァルトに矢継ぎ早に問われ、十一歳のマテアスはそんなふうにしか返せなかった。だがこんなことを聞いてくるのは、ジークフリートにからかわれたからだろう。会いに行った婚約者を初恋の相手と言われ、よく分からずに困惑しているに違いない。
「マテアス、初恋とはなんだ?」
「へ? はつこい?」
考えあぐねていた時に、ジークヴァルトが先に口を開いた。主からそんなワードが飛び出すとは思ってもみなかったマテアスは、その文字を理解するのに数秒を要してしまった。
「初恋とは……はじめての恋のことです」
「はじめての恋? 恋とはなんだ?」
「恋とは、ひとを好きになることですね」
「ひとを好きになる……? では好き、とはなんだ?」
「え? 好き……とは、嫌いの反対のことです」
「嫌いの反対?」
「ヴァルト様は酸っぱいものがお嫌いでしょう?」
「嫌いというか、好きではないだけだ」
「と、とにかく! 嫌いの反対が好きで、嫌いではないということが好きということです!」
六歳のジークヴァルトに矢継ぎ早に問われ、十一歳のマテアスはそんなふうにしか返せなかった。だがこんなことを聞いてくるのは、ジークフリートにからかわれたからだろう。会いに行った婚約者を初恋の相手と言われ、よく分からずに困惑しているに違いない。