寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「お嬢様の肖像画が?」
「ええ。ダーミッシュのお屋敷にもジークヴァルト様の肖像画があるでしょう? 同じようにわたくしの絵もフーゲンベル家に贈られたみたいなの」
「子供の頃のお嬢様……それはそれは愛らしかったのでしょうね……」

 公爵家のサロンでお茶を飲みながら、エラはうっとりとしたため息をついた。
 エラがダーミッシュ家にやってきたのはリーゼロッテが十歳のときだ。初めて会った日もなんて可愛らしい少女なのかと驚いたが、幼いリーゼロッテなど、きっと妖精にしか見えなかったことだろう。

「機会があればわたしも見てみたいものです」
「でもあの絵はヴァルト様のお部屋に飾ってあるのよね」

 不満そうにリーゼロッテは唇を尖らせた。

「居間のいちばん目立つ場所に飾ってあるのよ? ソファに座ると嫌でも目に入ってしまうから、わたくしそれが恥ずかしくって」
「では公爵様はお嬢様の絵を、毎日見てお過ごしになっているのですね」

 うらやましそうに言うエラに、リーゼロッテは顔を赤らめた。あの絵はジークヴァルトが五歳のときに贈られた。それ以来、ずっとあそこに飾ってあるらしい。

 初恋の相手は自分だと、ジークヴァルトは言っていた。はじめて会ったあの日から、絵を見てはリーゼロッテのことを思い出していたのだろうか?

(駄目だわ、ドキがムネムネする……!)

 身の内から(あふ)れそうになる力の(うず)を、慌てて抑え込んだ。動揺するたびに倒れていては、周りに迷惑すぎると言うものだ。

「駄々漏れてるぞ」

 その声と共に、クッキーが口の中へと詰め込まれた。驚いて見上げたそこには、ジークヴァルトが立っている。エラはさっと遠巻きに控えるように移動した。

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