寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 非難めいたリーゼロッテの口調に、ジークヴァルトは困惑している様子だ。

「では何をなさっているのですか?」
 純粋に疑問に思ってそう問うと、ジークヴァルトはすいと目をそらした。

「父上と母上に……手紙を書いて、送っている」
「お手紙を!」

(自分の誕生日にご両親にお手紙を……! きっと生んでくれてありがとう的な感謝を綴るんだわ!)

 感動したように瞳を潤ませたリーゼロッテを前に、ジークヴァルトの眉根がぎゅっと寄せられた。

「年に一度は連絡をよこすように言われている。それでその日に書くようにしているだけだ」
 そっけなく言うと、ジークヴァルトはちらりと時計に目をやった。

「お時間は大丈夫ですの?」
「時間が来ればマテアスが迎えに来る」

 そう言うと、ジークヴァルトは再びリーゼロッテの髪に手を伸ばしてきた。リーゼロッテはそばで控えていたエラに目配せを送った。すぐにエラはラッピングが施された包みを差し出してくる。

「あの、ヴァルト様、心ばかりなのですが、お誕生日の贈り物を受け取っていただけますか?」

 おずおずと包みを差し出すと、ジークヴァルトは表情なくそれを受け取った。

「開けてみてもいいか?」
「はい、気に入っていただけるとうれしいのですが……」

 刺繍のハンカチの出来栄えは、子供の頃に比べて格段に上達している。それでもジークヴァルトが包みのリボンをほどいていく様子を、ドキドキしながら見守った。

 包みを開いて、ジークヴァルトは三枚のハンカチを取り出した。綺麗に折りたたまれたそれを、一枚一枚、順に広げていく。

「そちらはジークヴァルト様のイニシャルと公爵家の家紋を、そちらは小さいですが走る馬を刺繍させていただきました」
「ああ、よくできている」

 刺繍をなぞりながらジークヴァルトは静かに言った。

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