寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
「本日のティータイムは、サロンに用意してございます」
マテアスに連れられて廊下を進む。
「時間が取れそうでしたら、旦那様も顔をお出しになるそうですので」
「ご無理なさらないでいただきたいわ……」
「では、そのように申し伝えておきます」
そんな会話をしているうちに、サロンの入口へとたどり着く。だいぶ春めいてきて、大きな一面のガラス戸からは、暖かな日差しが差し込んでいた。
「マテアス……あの方は一体どなた……?」
よろりとよろけたリーゼロッテが、マテアスの二の腕の袖をきゅっと掴んだ。慌ててそれを受け止めながら、マテアスはサロンへと視線を向けた。
「ああ、あの方はツェツィーリア様、レルナー公爵家のご令嬢でございます。ユリウス様の姪に当たる方ですよ」
サロンのソファには、まっすぐな黒髪に青い瞳をした少女が座っていた。外をじっと眺めながら、床に届かない小さな足をつまらなそうにぷらぷらと揺らしている。
「ツェツィーリア様は旦那様のはとこで、エーミール様とは従兄妹でいらっしゃいます」
「なんて、なんて可愛らしい方なの……!」
長く艶やかなストレートの黒髪。つり気味の瞳はジークヴァルトに似た深い青で、桜色の小さな唇は少し不機嫌そうにつんと尖っている。フランス人形と日本人形をいいとこ取りして、足して二で割ったような美少女だ。
はわはわとなりながら掴む袖をさらに強く握りしめたリーゼロッテに、「はぁ、そうでございますねぇ」とマテアスは気のない返事を返した。
「まるでおとぎの国から妖精が舞い降りたよう……」
「まあ、そう言われて見ればそうとも思えなくもないですが」
頬を上気させてツェツィーリアにくぎ付けとなっているリーゼロッテをみやって、マテアスは再び中度半端な同意を返した。
(リーゼロッテ様の方が、よほど可憐な妖精に見えますけれどもねぇ……)
ツェツィーリアは確かに美少女の部類に入るのかもしれない。しかし、黒髪に青目のジークヴァルトを見慣れているマテアスとしては、明るい色の金髪に緑の瞳を持つリーゼロッテの方が、よほど幻想的な印象を抱いてしまう。
フーゲンベルク家にいる人間は、使用人も含めて大半が黒や茶色の暗い色の髪に青系か茶色の瞳を持つ者ばかりだ。そんなこともあって、リーゼロッテの意見には心から同意はできないでいた。
(それにツェツィーリア様ですからねぇ)
彼女の本性を知る身としては、妖精というより小悪魔だろうなどと口には出せないことを思ってしまう。
「本日のティータイムは、サロンに用意してございます」
マテアスに連れられて廊下を進む。
「時間が取れそうでしたら、旦那様も顔をお出しになるそうですので」
「ご無理なさらないでいただきたいわ……」
「では、そのように申し伝えておきます」
そんな会話をしているうちに、サロンの入口へとたどり着く。だいぶ春めいてきて、大きな一面のガラス戸からは、暖かな日差しが差し込んでいた。
「マテアス……あの方は一体どなた……?」
よろりとよろけたリーゼロッテが、マテアスの二の腕の袖をきゅっと掴んだ。慌ててそれを受け止めながら、マテアスはサロンへと視線を向けた。
「ああ、あの方はツェツィーリア様、レルナー公爵家のご令嬢でございます。ユリウス様の姪に当たる方ですよ」
サロンのソファには、まっすぐな黒髪に青い瞳をした少女が座っていた。外をじっと眺めながら、床に届かない小さな足をつまらなそうにぷらぷらと揺らしている。
「ツェツィーリア様は旦那様のはとこで、エーミール様とは従兄妹でいらっしゃいます」
「なんて、なんて可愛らしい方なの……!」
長く艶やかなストレートの黒髪。つり気味の瞳はジークヴァルトに似た深い青で、桜色の小さな唇は少し不機嫌そうにつんと尖っている。フランス人形と日本人形をいいとこ取りして、足して二で割ったような美少女だ。
はわはわとなりながら掴む袖をさらに強く握りしめたリーゼロッテに、「はぁ、そうでございますねぇ」とマテアスは気のない返事を返した。
「まるでおとぎの国から妖精が舞い降りたよう……」
「まあ、そう言われて見ればそうとも思えなくもないですが」
頬を上気させてツェツィーリアにくぎ付けとなっているリーゼロッテをみやって、マテアスは再び中度半端な同意を返した。
(リーゼロッテ様の方が、よほど可憐な妖精に見えますけれどもねぇ……)
ツェツィーリアは確かに美少女の部類に入るのかもしれない。しかし、黒髪に青目のジークヴァルトを見慣れているマテアスとしては、明るい色の金髪に緑の瞳を持つリーゼロッテの方が、よほど幻想的な印象を抱いてしまう。
フーゲンベルク家にいる人間は、使用人も含めて大半が黒や茶色の暗い色の髪に青系か茶色の瞳を持つ者ばかりだ。そんなこともあって、リーゼロッテの意見には心から同意はできないでいた。
(それにツェツィーリア様ですからねぇ)
彼女の本性を知る身としては、妖精というより小悪魔だろうなどと口には出せないことを思ってしまう。