寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 ぱあと花開くような笑顔を向けられ、リーゼロッテの小さな胸は再びきゅううんとなった。美少女の笑顔は破壊力が半端ない。女の子はもはや、そこにいるだけで正義なのだ。

「レルナー公爵令嬢様、お初にお目にかかります。リーゼロッテ・ダーミッシュと申します」
「わたくし、ヴァルトお兄様のお相手と一度お話ししてみたかったの! ね、リーゼロッテお姉様とお呼びしてもいい? わたくしのことも名前で呼んでいただきたいわ」

 愛らしい小さな手できゅっと手を掴まれて、リーゼロッテはサロンの中へと引っ張っていかれた。子供の体温はなぜこうも高いのだろう。リーゼロッテ自身も高揚のあまり、熱が上がってしまいそうだ。

「お兄様はどうせお忙しくて、すぐには来られないのでしょう? わたくし、リーゼロッテお姉様としばらくお庭を散歩してくるわ」
 そう言って、ぐいぐいとリーゼロッテを窓の方へと引っぱっていく。

「いけません! ツェツィーリア様!」

 それを止めようとするマテアスを無視して、ツェツィーリアはリーゼロッテを庭へと連れだそうとした。

「大丈夫よ、マテアス。護衛の方もいらっしゃるのでしょう? サロンからは離れないようにするから心配しないで」
「そうよ、行きましょう、リーゼロッテお姉様」

 ツェツィーリアの可愛さにときめきが止まらない。リーゼロッテは笑顔のままその手に引かれ、庭へと出ていった。

 マテアスが庭を見やると、サロンのガラス戸の付近をふたりはゆっくりと歩いている。見えないように護衛をしていたユリウスが、さりげなくふたりの後をついて行ったようだ。ユリウスがそばにいるのならば、そう大事になることはないだろう。

「はあ、まったく……あの我儘ぶりは相変わらずですねぇ」

 リーゼロッテの謙虚な態度に慣れてきてしまっていたマテアスは、小さくため息をついた。ジークヴァルトに報告しないと、後で何を言われるか分からない。そう思って、足早にその場を後にした。

< 48 / 403 >

この作品をシェア

pagetop