寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
     ◇
「まだツェツィーリア様は見つからないの?」

 お茶会がお開きになり、ヤスミンとクラーラを見送ったその後も、ツェツィーリアの行方はわからないままだった。

「ただ今屋敷中の者が手を尽くしてお探ししているそうです」

 エラが不安げに答えると、ジークヴァルトが足早にやってきた。

「ヴァルト様、申し訳ございません。わたくしがついていながら……」
「いい、お前に落ち度はない」

 そっけなく言って、ジークヴァルトはリーゼロッテの手を引いた。

「こっちだ」

 そのまま廊下へと歩き出す。訳も分からずエスコートされて、そのまま廊下を進んだ。人気(ひとけ)もなく、あまり行ったことがないような方向だ。

「こちらにツェツィーリア様がいらっしゃるのですか?」
「ああ、気配がする」

 そう言った矢先に、廊下の向こうから人影が見えてきた。あの姿は確かにツェツィーリアだ。安堵の息を漏らすも、その横には、ツェツィーリアよりも少し背の高い少年が歩いている。その見慣れない少年は、やさしくエスコートするようにツェツィーリアの手を引いていた。

「ルカ!?」

 近づくにつれ、その少年の姿がはっきりしてくる。リーゼロッテは驚いて、ジークヴァルトの手を離れて思わずふたりに駆け寄った。

「ツェツィーリア様」

 その体をぎゅっと抱きしめる。驚いた様子のツェツィーリアだったが、その腕を振り(ほど)こうとはしなかった。

「お怪我などはございませんか?」
「問題ないわ。屋敷の中をちょっと散歩してきただけよ」

 ツェツィーリアは不機嫌そうにつんと顔をそらした。

「……でも、心配してくれてありがとう」

 付け足された消え入りそうな小さな声に、リーゼロッテは心からの笑顔を返した。

「ご無事で何よりですわ」

 そう言って再びぎゅっと抱きしめる。ツェツィーリアも戸惑いながらも、小さく抱きしめ返してきた。

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