寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
 公爵家の歴史についても知識が深い。元使用人とは言え、どうしてそこまで知っているのかと感心してしまう。

「わたしはマテアスと共に、子供の頃から旦那様とアデライーデ様のおそばにおりましたから。嫌でも頭に入るというものですわ」

 苦笑いしながら言う。本来知識を蓄えなければならないアデライーデよりも、自分の方が造詣深くなってしまった。だが、こうしてリーゼロッテの役に立っているのなら、それも無駄ではなかったと、エマニュエルの口元は無意識にほころんだ。

「でもわたくしが学んだところで、ジークヴァルト様のご負担が軽くなる訳ではないのよね」
「何かをして差し上げたいというリーゼロッテ様のお心に、旦那様は何よりもおよろこびになられますわ」

 めずらしくため息をつくリーゼロッテに、エマニュエルはやさしく微笑んだ。

「だといいのですが……」

 自信なさげに答えるリーゼロッテに、浮かんだ笑みは苦笑いに変わる。

「ずっと旦那様を見てきたわたしが言うのですから、間違いはございませんわ」
「まったくもってその通り」

 いきなり会話に入ってきたマテアスに、リーゼロッテは驚きで振り返った。

「すぐ旦那様もいらっしゃいますので、先に奥書庫を開けてまいります」

 鍵の束を手に、マテアスは本棚へと向かった。ごそごそと奥に手をやると、その本棚が横に移動していく。裏から現れた鉄の扉に鍵を差し込んだタイミングで、ジークヴァルトがやってきた。

「お忙しい中お時間をいただきありがとうございます」

 淑女の礼でそれを迎えると、「いい、問題ない」とするりとリーゼロッテの髪をなでてくる。

「では、エラ様、エマニュエル様。リーゼロッテ様はこちらでお預かりいたします」

 マテアスに見送られて、ふたりは書庫を後にした。ここからは託宣にまつわる勉強のスタートだ。

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