寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-

第6話 束縛の檻

 春のあたたかな日差しが、テーブルの上に揺れる木漏れ日を映す。満開の花が咲き乱れる木のそばで、リーゼロッテはティータイムを楽しんでいた。同席するのはツェツィーリアとルカ、それにエラだ。

「それでオクタヴィアはレオン・カークと結婚したというの?」
「はい、その後カーク家でしあわせに暮らしたようですわ」

 ツェツィーリアが泣き虫のジョンの(こと)顛末(てんまつ)を聞きたがるので、リーゼロッテは順を追って説明していた。

「公爵夫人から子爵夫人に。なかなか大胆な選択ですね」

 感心したようにルカが頷いている。流れで異形の者の存在を明かしたが、ルカは思った以上にすんなりと受け入れてくれた。

「でも公爵家には息子がいたのでしょう? 自分だけしあわせになるなんて許せないわ」
「ツェツィー様はおやさしいですね。その方は公爵家の跡取りとして、立派に責務を果たされたのかもしれません」

 ルカはそう言って、ツェツィーリアの手を取った。

「だっ、誰が手に触れていいって言ったのよ!?」
「傷ついたツェツィー様をおなぐさめしたくて……。触れることを許してはいただけませんか?」
「そう言うことは触れる前に言いなさいよ。それに、どうしてわたくしがなぐさめられなくてはいけないの? 誰も傷ついてなんていないもの」

 真っ赤になってぷいと顔をそらしながらも、ルカの手を振りほどこうとはしない。それをいいことにルカはその手を愛おしそうに握っている。

「それにしても、あそこにそんな異形の者が立っていたなんて……」

 エラは満開の花が咲く木を見上げた。ジョンが浄化されたあと、枯れていた木に突然花が咲いた。桜に似た薄紅色の綺麗な花だ。

「ずっと黙っていてごめんなさい」
「とんでもございません! このエラの目に異形が視えないばかりに、お嬢様のお力になれなくて……」
「そんなことはないわ。今はこうして疑うことなく話を聞いてくれるし、それにエラは無知なる者だから」

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