野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
横になっても起きていらっしゃっても、源氏(げんじ)(きみ)の涙の乾くときはない。
(きり)のなかに閉じこめられたようにしてお暮らしになっている。
<人より恵まれた生まれではあったが、幼いころから肉親(にくしん)を失いつづけた。『世の中とは厳しいところだ、調子に乗ってはいけない』と仏様は教えてくださっていたのだろう。それなのに強がってこの年まで生きて、ついに最愛の人に先立たれるという不幸を味わうことになった。
もうこの世に未練(みれん)はない。仏教の修行(しゅぎょう)(さまた)げになる人もいない。しかし(むらさき)(うえ)を失った動揺(どうよう)が収まらなくて、出家(しゅっけ)しても修行に集中できない気がする>

「動揺を静め、悲しみを忘れさせてください」
まずは心を落ち着かせなければと、仏様にお願いなさる。
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