野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
四十九日(しじゅうくにち)の間、大将(たいしょう)様も二条(にじょう)(いん)にお(こも)りになる。
一日中、源氏(げんじ)(きみ)のおそばに(ひか)えていらっしゃるの。
苦しそうなご様子の父君(ちちぎみ)を悲しくご覧になって、あれこれとお(なぐさ)めなさる。

台風のような強い風が吹く夕暮れ時に、かつて(むらさき)(うえ)のお姿を垣間(かいま)()したときのことを思い出される。
<亡くなったあとだけれど、またお顔を拝見できたことも夢のようだった>
悲しくなってしまわれて、大将様は周りに気づかれないように「阿弥陀(あみだ)(ぶつ)阿弥陀(あみだ)(ぶつ)」と仏様のお名前を(とな)えていらっしゃる。

<十五年も昔にちらりと拝見したお顔が忘れられずにいたら、次にお顔を見られたのは亡くなったあとだった。この先はずっと、あの美しい死に顔を忘れられないのだろう>
まだ夢のなかにいるような気がなさる。
身分の高い僧侶(そうりょ)たちに念入りにお(きょう)を読むようお命じになった。
源氏の君も大将様も、それぞれ悲しみに(しず)んでおられる。
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