野いちご源氏物語 三九 御法(みのり)
太政(だいじょう)大臣(だいじん)様も頻繁(ひんぱん)にお見舞いのお手紙を送られる。
源氏(げんじ)(きみ)のご親友、そして亡きご正妻(せいさい)兄君(あにぎみ)として、最愛の女君(おんなぎみ)を亡くされた源氏の君にご同情なさるの。
<三十年前、妹が亡くなったのもこの季節だった。あのとき妹の死を()しんでくださった人たちは、もうほとんど亡くなってしまった。私も間もなくだろう。死に遅れるとか先立つとか言って大騒ぎしても、結局それほど大差(たいさ)ないうちに誰もが死ぬのだ>
しんみりとした夕暮れの空を(なが)めて、人の命の(はかな)さを悲しくお思いになる。

空もまた美しく悲しい様子だったので、源氏の君にお手紙をお書きになった。
(むらさき)(うえ)がお亡くなりになったことで悲しみの涙を流しておりましたが、秋の空を眺めていると遠い昔に亡くなった妹のことも思い出して、また涙がこぼれます」
源氏の君は、
「あれもこれも悲しくて、秋という季節が人の心を刺激しやすいのかもしれません」
とお返事をお書きになる。
<ただ悲しんでいるだけの内容では、『すっかり弱気になったらしい』と笑われるかもしれない>
ご親友ではあるけれど、情けないところを見せたくないお気持ちもあって、たびたびのお見舞いのお礼もきちんと付け加えなさった。
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