すれ違いだらけの婚約関係は、3年越しのファーストキスでやり直しましょう ~御曹司の婚約者が嫉妬深いなんて聞いてません!!~
それは秘密の___
花井 桃香は、悩んでいた。
誰にも言えない秘密を抱える彼女は、仕事の休憩時間に、スケジュールアプリと睨めっこをしている。そして、限界を迎えたように机に倒れこんだ。
「もーもか。どしたの?」
「うわ!?な、なんでもない!!!」
「……本当にどうしたのさ」
考えに没頭していて、同僚兼友人である楓の声に変な反応をしてしまった。
しばらくジッと見つめあっていたが、次第に楓の顔がニヤニヤと歪む。あ、悪い顔。
「なになに〜?恋人ですか?デートですか??はー、ようやく桃華にも春がきましたか〜!!」
腹の立つ友人のリアクションに、何も言えない。
当たっているようで、外れている。
「うぐっ、」
「え、何その顔。どっちなのよ」
「…正確に言えばハズレ」
楓は不思議そうに首を傾げた。それから、興味深そうに目を瞬いた。
「どういうこと?」
「説明できないんだよ〜…」
再度スケジュールアプリに目を向けると、楓はそばに座りつつ、画面を見ないように配慮してくれた。ありがたい。
コーヒーをすすりながら、楓は呟く。
「ふーん。まあ、何でもいいけどさ。変な男にだけは引っかからないようにね。最近は、ヒモとかメンヘラとか色々あるし」
その言葉に、小さくツッコむ。
「その真反対なんだよね…」
「ん?何か言った?」
「ううん。何も。」
聞こえていたとは思わず、慌てて首を振る。危ない危ない。
スケジュールアプリには、所々スタンプマークがつけられていた。
大きな赤いバツ印。
それは、滅多に会わない婚約者が、同棲しているマンションに帰ってくる日を示すものだった。