すれ違いだらけの婚約関係は、3年越しのファーストキスでやり直しましょう ~御曹司の婚約者が嫉妬深いなんて聞いてません!!~
花井 桃華。25歳。
婚約者の存在を知らされてから、マンションで同棲を始めて、3年が過ぎようとしていた。
それでも私は、未だに婚約者に慣れていなかった。
婚約者と会うのは、年に数回程度。
会ったとしても、家の廊下で挨拶したぐらいで、一緒に食事をしたことすらない。あ、でも顔合わせの時に高級レストランに連れていかれたことはある。でも、そんなのノーカンだ。味がしなかったし、緊張しすぎてあまり覚えていない。
彼は仕事が忙しいのか、マンションに帰ってきてもほとんど部屋に引きこもっている。かく言う私も、気まずくて自室に引き籠っているため、実際彼が何をしているのかは分からない。
でも、忙しいのは間違いないだろう。
何を隠そう、彼は大手会社の次期社長だから。
私の祖父も社長であったため、何かの縁でつながり意気投合。そこから、孫同士を婚約させる話が出た、と後から聞いた。
そんな変な縁を結ばないで欲しいものだが、まあ、置いておこう。
問題は、そんな婚約者がなぜか1週間もマンションに滞在することだ。
いや別に、同棲しているマンションなんだから、1週間滞在しても変なことではない。ただ、今までと比較すると異例すぎるのだ。
何度見ても、スケジュールアプリに綺麗に並んだ、赤い大きなバツ印は消えない。どうやら見間違いでも、幻覚でもないらしい。
(こんなこと、今まで無かったのに…)
もしかしたら婚約破棄かもしれない、なんて考えに至るほど限界を迎えている私は、まるで生きた心地がしなかった。