貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


 少しだけすっきりした頭で、明人は今後のことを考え始めた。

 もうすぐ、年末年始の慌ただしい時期がやってくる。

 忙しい時期が終わったら、ゆっくりと時間をとって気持ちを伝えよう。

 そして彼女の気持ちも伝えてもらって……お互いの関係をどうするかは、そのあとに彼女の気持ちも踏まえて決めることだ。

 立ち上がって、本棚からある一冊の本を取る。

 ぎっしりと本が詰まった本棚の、一番良いところに置いてある本。

「夜明けの詩」。詩乃と初めて言葉を交わしたときに、贈ってもらった詩集だった。

 贈り物というよりは、彼女が代金を出してくれたという方が正しいかもしれない。

 それでも、明人にとってこれが特別な一冊なのには間違いなかった。

 不審者に絡まれていた詩乃を助けたあのときから、この縁は始まったのだ。

 開いて、ページをゆっくりとめくる。

 考えが煮詰まりそうなときは、一度気を逸らした方がよい。

 紙に印刷された、美しい言葉の連なりが少し心を和ませてくれる。

 何度も読み返した詩をなぞっていても、明人の脳裏には、詩乃の笑顔がきらめくようにちらついていた。
 
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