貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

 楽しげな人々を、初春の明るい陽光が照らしている。

「ねえねえ。今日のコーデ、可愛くなぁい?」

 詩乃は、着ているスカートの裾を摘んで見せた。

 柔らかい白のニットに、ふんわりしたブルーのロングスカートを合わせたシンプルなコーデだ。

 ピンクベージュのコートも、くすみグリーンの旅行用リュックも気に入っている。

 詩乃は、部屋ではパーカーに履きやすいパンツを合わせていることが多い。

 明人が見慣れている詩乃の装いとは、少し印象が違うはずだ。

 明人はちょっと得意げに見上げる詩乃を見遣り、一瞬目を逸らした。

 そして、すぐに詩乃へと視線を注ぎ直した。

「可愛いですよ。とても」

「えっ、そ、そう? ありがと」

 自分で話を振っておきながら、真正面から褒められるとドキドキしてしまう。

 明人の服装を、改めて横目で眺めてみた。

 黒のタートルネックニットにダークグレーのスリムスラックスを合わせ、ネイビーのチェスターコートを着ている。

 普段、詩乃の家で過ごすときの服装と系統は変わらない。

 とことんシンプルだが、すらりと背の高い明人によく似合っていた。

(改めて見ると、本当に明人くんって見た目もカッコいいな……)

 涼しげな横顔を見ていると、きゅーんと胸が疼く。
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