貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

新しい職場にて

話は、数ヶ月前の夏の日まで遡る。

「どう?仕事、慣れてきたかしら」

 和やかなオフィスにて。隣のデスクから、声をかけられた。

 仕事に没頭していた早瀬詩乃(はやせ しの)は、元気よく答えた。

「はい! 居心地の良さそうな職場で、安心しました」

 ここは、とあるオフィスビルのワンフロア。

 あちこちで談笑する声が聞こえているが、騒がしいというほどではない。

 詩乃が転職先に選んだのは、株式会社ブルーデザイン。ゆったり働くのには、最適な環境だった。

 この会社では、キャラクター雑貨の製造を行っている。

 既存のキャラクターのライセンスを取り、公式のお墨付きを得て、様々なグッズを作る。

 メジャーどころではない、ニッチなキャラクターの、実用性にも優れた可愛らしいグッズの製造で定評がある。

 地味な企業だが、取引先からもユーザーからも信頼は厚い。

 ニッチなキャラクターのグッズでも安定的な収益を出しているのは、webマーケティングに強いチーム……宣伝が上手い部署が活躍しているからだった。
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