貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

 
 夜が白々と明ける頃。愛の儀式は、ようやく幕を下ろした。

 ベッドの中で、まだ熱い肌をぴったりと合わせたまま抱き合う。

 明人の腕の中で、詩乃は甘えるように頬を擦り寄せた。

「……明人くん」

「はい」

「すき」

「私もです」

 詩乃が、思い出したように小さく呟く。

 情を交わしている最中も、いったい何度好きだと伝えあっただろう。

 これまで言いたくても言えなかった分を取り返すかのように、ふたりは何度も愛を囁き合った。

「……すっごく、よかった」

 照れたように呟く詩乃の髪を撫でながら、明人が優しく答える。

「ええ。本当に……可愛らしかった」

 額に優しく施される明人のキスに、もう情欲の気配はない。

 詩乃の疲労を見て取ったのか、明人はまるで寝かしつけるように優しく抱いていてくれる。

「ずっと、こうしたかったんだから……」

 まぶたが重くなってくるのを感じながら、詩乃は拗ねたように言う。

 本当は、ずっとずっと明人と身も心もひとつになりたかった。

 思えば、出会ったときから既に、明人に惹かれていたのかもしれない。
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