貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

朝を迎えて


「うーん……」

 暖かいベッドの中で、詩乃は寝返りを打った。

「おはようございます」

「おはよ……?」

 すぐ隣から聴き慣れた声がして、詩乃はしぱしぱと瞬きした。

「わっ、あ、えっと、おはよう」

 昨夜のことを突然思い出して、詩乃は慌てて顎まで布団を被った。

 昨日の夜、初めて明人と結ばれた。

 何度も何度も愛を伝え合い、身体を愛撫し合い、幸せに溺れるうちに、眠ってしまったらしい。

 時間を確認すると、既に朝の八時だった。

 明人は、とっくに起きていたらしい。

 昨日貸した部屋着ではなく、いつもの白いシャツとシンプルな黒いパンツに身を包んでいる。

 キッチンからは、コーヒーの香りも漂ってきていた。明人が淹れてくれたらしい。

「わ……わたし、あのまま寝ちゃった……!?」

 恐る恐る確認すると、薄い羽織りをまとっている。眠ってしまったあと、明人が着せてくれたのだろう。

「はい。事が済んだあと、幸せそうに寝入っていました」

 冷静に告げる明人の顔が見られない。

 あまりの恥ずかしさに、布団に顔を埋めたままじたばたした。
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