貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


「手料理を」

 明人は、一瞬固まった。うちで作って、彼女の家に持っていけばいいのだろうか。

 確かに、自炊が出来るとは伝えてある。

 一応、人に食べさせられる味の料理は作れる。

 しかし、どこで振る舞えばいいのか。

 一人暮らしの男の家に、詩乃を呼ぶわけにはいかない。

「手料理! うちで、ホームパーティしましょ。といっても、わたしはお茶淹れるだけですけど」

 わたし、料理は練習中なので! と、詩乃が明るく付け足す。

「ダメですか?」

 悩むような明人の顔を見て、詩乃は恐々と言った。

「いえ、それは構いませんが……」

 料理を振る舞うこと自体は、問題ない。問題は、場所だ。

「よく知らない男を家に上げるのは、やめた方がいいのでは」

 もちろん、家に招かれたからといって、無礼なことをする気は全くない。

 詩乃だって、それを感じ取ったからあっさりと家に招いてくれたのだろう。

「もう、よく知らない男じゃないじゃん!」

 なにを今さら、と、詩乃はあっけらかんと笑った。

< 24 / 223 >

この作品をシェア

pagetop