貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
「手料理を」
明人は、一瞬固まった。うちで作って、彼女の家に持っていけばいいのだろうか。
確かに、自炊が出来るとは伝えてある。
一応、人に食べさせられる味の料理は作れる。
しかし、どこで振る舞えばいいのか。
一人暮らしの男の家に、詩乃を呼ぶわけにはいかない。
「手料理! うちで、ホームパーティしましょ。といっても、わたしはお茶淹れるだけですけど」
わたし、料理は練習中なので! と、詩乃が明るく付け足す。
「ダメですか?」
悩むような明人の顔を見て、詩乃は恐々と言った。
「いえ、それは構いませんが……」
料理を振る舞うこと自体は、問題ない。問題は、場所だ。
「よく知らない男を家に上げるのは、やめた方がいいのでは」
もちろん、家に招かれたからといって、無礼なことをする気は全くない。
詩乃だって、それを感じ取ったからあっさりと家に招いてくれたのだろう。
「もう、よく知らない男じゃないじゃん!」
なにを今さら、と、詩乃はあっけらかんと笑った。