貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
「ごちそうさまでした」
女性には多すぎるだろうか、と思うほどの量を出したのに、詩乃は綺麗に平らげてしまった。
「お口に合ってよかったです」
詩乃に淹れてもらったお茶を飲みつつ、明人は控えめに言った。
一人暮らしの女性の部屋にいる緊張感も、かなりほぐれてきていた。
なにより、詩乃は全く意識する様子はない。
「ほんとにおいしかった! こんなおいしい手料理久しぶり」
マグカップを両手で持って、詩乃はニコニコしながら明人を見た。
明人は終始大人しいが、表情はとても柔らかい。彼なりに楽しんでくれているようだ。
美しい顔に時折笑みが浮かぶと、詩乃は嬉しくなった。
「新しい職場はどうですか」
明人は、何気なく話を向けた。
「とってもいいところだよ。わたし、合ってるかも」
先輩が気遣ってくれること。なんだか気難しい人に感謝されているらしいこと。
新しい仕事の好きなところ・楽しいところが、どんどん言葉になって溢れてくる。