貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


「事務職って初めてだけど、こんなに楽しいなんて思わなかった」

 営業をやっていた頃は、こんなに自分の話をし続けることなんてなかった。

 モノを売る=信頼を得るためには、とにかく相手の話に真摯に耳を傾けなければならない。

 詩乃は長い間、自分の話はそこそこに、よく聴くことがクセになっていた。

「わたし、人に喜んでもらうのが好きなの。今の職場は、ほんのちょっとしたことで色んな人が喜んでくれる」

 夢中で言い切ったあとに、詩乃は自分ばかりが話していたことにハッと気がついた。

 明人は、黙って話を聴いてくれている。

 頷いて、小さく相槌を打ち、穏やかな表情で。

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