貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
「わあ……」
詩乃の瞳が、物語の中に入り込んでいく。
明人の書いているのは、SF小説だった。
舞台は近未来。現実の学部レベルの科学を下敷きにしたストーリーで、リアリティがあるタイプの作品だ。
しばらく、沈黙が流れた。詩乃が、夢中でページを繰っている。
「まあまあ、その辺で」
「はっ。ごめん。熟読するモードになってた」
詩乃は、楽しい空想に浸った子供のように輝いた面を上げた。
「ありがとう。明人くんの、心の中を覗いたみたい」
詩乃の口ぶりに、明人は少なからずドキッとした。
心の中。誰に対しても滅多に見せない自分の心を、彼女にはつい見せてしまえそうだった。
「明人くんの物語を読んだ人は、きっとみんなワクワクしてるね」
さらりと紡がれた詩乃の言葉が、じんわりと心に沁みた。
詩乃のキラキラした瞳が、まだ自分の描いた物語を映しているようだった。