貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

不思議な女(ひと)


 その夜、帰宅した明人は、いつものようにデスクのパソコンを開いた。

 届いているメールをチェックする。ほとんどは、読者からのファンレターだ。

 普段通り、いくつかのwebサイトを開く。

 誰でも自作の電子書籍を販売出来る大手サイトでは、また明人の作品が売れた通知が来ていた。

 ありがたいことだ。好きで書いているだけのものが、収入にもなる。

 抜かりのない性格の明人は、せっかく書いたのだからと作品を配信して収益化する仕組みを作っていた。

 万が一仕事を辞める羽目になったとしても、ささやかに暮らしていけるような収入になっている。

 別に、お金が欲しいわけではない。単に、商品があったから販売しただけのことだ。

 それでも、自分のしたことが数字になって帰ってくるのは素直に嬉しかった。

 物語を綴るのが好きでたまらないのかというと、実はそうでもない。

 そりゃ、好きといえば好きだ。興味のある分野について調査したり、隙のないプロットを組み、計画通りに書き進めるのは楽しい。

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