ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「仕事を放棄する手もあるけれど……」
「そうです! それがいいです!」
「だけれど楽しいのよね、領地の仕事って」

 言っていて遠い目になってしまう。
 今思うと、せっせと波乱の種を蒔いていたのは、他でもないアンドレア自身だったのだから。

 アンドレアとポールは従姉弟同士だ。
 母とともにシュナイダー家に遊びに行っては、ポールの勉強によくつきあっていた。
 五歳下のポールはできの悪い弟のような存在で、勉強を嫌うポールを押しのけてアンドレアが家庭教師を質問攻めにして辟易させるのがいつものことだった。
 そのことを父ケラー侯爵は良く思っていなかったようだ。
 しかしシュナイダー公爵は笑って好きにさせてくれたため、アンドレアの領地経営の手腕はめきめきと上達していった。

(お父様はきっとそこを利用したのよね。ポールにすり寄ればケラー家は今後も安泰だから……)

 王位継承権第二位のポールは、次期国王になる可能性が高い。
 アンドレアたちの祖父である国王は、御年九十歳を越え現在は病床に就いている。
 王太子である継承権第一位の伯父がいるが、彼も六十歳を越えていた。気弱な性格もあって、自身が王位を継ぐことに消極的になっているらしい。
 状況から見てポールに軍配が上がり過ぎている。
 現状を覆すことはアンドレアには困難に思えた。

「仕事の手を抜くなってお父様にも言われてしまったし、シュナイダー家が傾くようなことになったら、わたくしもマリーも行くところを失ってしまうわ」

 手抜きをすればポールが大激怒するだろう。
 家からは追い出されるだろうし、そうなったとき父が出戻ったアンドレアをケラー家に迎え入れるとは思えない。
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