ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 これ以上の暴君ぶりを放置すると、本当にシュナイダー領全体が戦禍に飲み込まれることだろう。

「内乱? そんなものは鎮圧すれば済むことじゃないか。なんのための自警団だ」
「その自警団が反旗を翻しております。旦那様におかれましては、我が領の現状を正しく把握していただきたく存じます」
「把握など当然している。反乱分子には火薬を使って追い払え。それよりも急務は財源確保だ」
「領民に火薬を使うなどと……」
「うるさい! お前は黙って俺の指示に従っていろ!」

 帳簿をめくっていたポールが、ある場所に目を止めた。
 そこは税に関するページだった。

「なんだ、領民への税はまだ五割も取っていないじゃないか」
「いえ、すでに五割を越えそうな勢いでございます」

 すかさず家令がくぎを刺す。
 それが届いたのか届かなかったのか、しばらくポールは思案顔で帳簿を見つめていた。

「ならばまだ取り立てる余地があるな。よし、今後税は五割五分……いやいっそ七割まで引き上げろ!」
「そんなに税率を上げたら領民は生活していけません!」
「そのくらいの負担は当然だろう。この俺が統治するシュナイダー領に住まわせてやっているんだ」
「しかし領民が納得するとは思えません」
「橋の修復に必要な財源だとでも言っておけばいい。どうせ無能な奴らだ。それで十分騙し(おお)せる」

 これでシュナイダー領はお終いだ。
 絶望のあまり家令は帳簿を取り落としそうになった。
 それでも先代公爵への恩義もあり、この立場から逃げ出すことも叶わない。

(こんなときにアンドレア様がいてくださったら……)

 いや、アンドレアがいれば、こんな事態は起こり得なかっただろう。
 激しくなっていく暴動の流れは、もはや誰にも止められないところまで迫っていた。

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