ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「ああ、そうだ。それにどちらが上なのかを、シュミット家にはよく分からせてやらねばな。格の違いを見せつけてやる」

 不敵な笑みを浮かべ、ポールは颯爽と屋敷をあとにした。


 ♱ ♱ ♱


 エドガーは驚きもせず、屋敷のエントランスで突然の来訪者を笑顔で迎え出た。
 シュナイダー家もそろそろ動く頃合いかと、ちょうどエドガーも思っていたところだ。
 唯一意外だったのは、ポール本人が直接乗り込んできたことだ。

(それだけひっ迫してきているという証拠か)

 冷静に考えて、そ知らぬ顔で大袈裟に握手を求めた。

「これはこれはシュナイダー公爵。わざわざシュミット家に出向いていただくとは!」

 その手を振り払い、ポールはエドガーを睨み上げてくる。
 自分が軽く扱われるのが我慢ならないのだろう。

(それこそ自信の無さの顕れだな)

 内心そんなことを思いつつ、エドガーは快活な声で両手を広げた。

「本日はどのようなご用件で? 不躾に先ぶれもなく来られたのです。よほどのことがおありかと」
「御託はいい。今すぐ火薬の取引を再開させろ。そうすれば今回に限って俺に対する不敬は不問にしてやる」
「お断りします」

 自分の慈悲深さに酔っているポールを前に、笑顔を保ったままエドガーはすっぱりと返した。
 ポールは虚を突かれたような顔をしている。
 エドガーが泣いて喜びながら、平身低頭でポールに謝罪するとでも思っていたのだろう。

「貴様は何を言っているんだ? 己の立場が見えていないのか?」
「いやぁ、そのお言葉はシュナイダー公爵にこそ必要でしょう」
「なんだと!?」

 激昂するポールに対して、エドガーは軽く肩をすくめただけだ。

「山を切り開くためならともかく、領民に向けて火薬を使うなど……契約違反も甚だしい。そうお思いになられませんか?」
「奴らが先に牙を剥いたのだ! これまでの恩をあだで返しやがって! 正当防衛のために使って何が悪い!」
「これまでの恩、ですか」

 やれやれといった感じでエドガーは返した。
< 111 / 138 >

この作品をシェア

pagetop