ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 その恩を地道に積み上げてきたのは、先代のシュナイダー公爵でありアンドレアだ。
 それをこの一年足らずで見事になかったことにしてしまった。
 それどころかマイナス収支で、未だ下落の一途をたどっている。
 財源を喰い尽くすスピードにも呆れたが、ここまでやらかして未だ自信満々でいられるポールの精神がエドガーには信じ難く思えてしまう。

「とにかく火薬はお売りできません」
「こちらの足元を見おって! いくらだ。いくら出せばいい!?」
「ですからどれだけ金を積まれようと、シュナイダー家にはお売りできないと申し上げています。例え一グラムであろうと、ね」
「貴様はそれでも人かっ。この俺自らが頭を下げに来たんだぞ!」

 いつ頭を下げられたのだろうか?
 人を食った態度で、エドガーは小首をかしげた。

「それにシュナイダー家にはライラもいるんだ。貴様の婚約者のライラがな!」
「おや、ご存じありませんでしたか? 彼女とはとっくに婚約破棄が成立しておりましてね。わたしもとうとう運命の伴侶に出会いまして、今は新婚生活を満喫しているんですよ。おかげ様で跡取りにも恵まれて、シュミット侯爵家の家督も継いだところです」

 満面のにっこにこ顔で言うと、ポールは言葉を詰まらせた。
 すぐに真っ赤な顔になって、よく聞き取れない意味不明な言葉を口から漏らし始めた。

「エドガー? 一体どなたがいらっしゃったの?」

 そこに様子を窺いに来たアンドレアが、運悪く顔を出してしまった。
 無防備に出てきてしまったアンドレアは、ポールの存在に驚き歩を止めた。
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