ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「驚かれるのも無理はありません。わたしも初めて会ったときは亡きシュナイダー夫人かと思いましたからね。実はアンジェはケラー侯爵の庶子でして、夫人と似ているのはまぁ当然かと。それでアンジェとはお互い運命を感じましてね、幸運なことに我が妻として迎えられたのですよ」

 ぐっと抱き寄せて、無防備な頬に口づけた。
 一瞬びっくり顔になったアンドレアは、恥ずかしそうにエドガーの胸に顔をうずめてくる。

(うん、やはりなかなかいい)

 アンジェとしての演技だということは分かっているが、若干にやけた顔でエドガーはアンドレアのつむじに再び口づけを落とした。

「そ、そんな馬鹿なことがあるか。どこからどう見てもアンドレアではないか!」

 再び手を伸ばしてきたポールから、隠すようにアンドレアを遠ざける。

「おやめください。アンジェは市井(しせい)育ちです。連れて行ったところでシュナイダー家のお役には立てませんよ」
「そんなものやらせてみないことには分からないだろう。それにこんな見え透いた嘘に騙されるものか!」
「でしたら国にご確認を。アンジェの身元は国王に認めていただいていますから」

 はったりを利かせるために自信満々で言い切った。
 ここでアンドレアだとバレてしまったら、これまでの苦労が水の泡だ。

「ねぇ、エドガー。わたし、この人に連れてかれちゃうの?」

 舌足らずな口調でアンドレアが不安そうに見上げてくる。
 相好を崩したエドガーは、やさしい手つきでアンドレアの頬を包み込んだ。

「心配はいらない。アンジェは俺だけの妻だ」
「ほんとう?」
「ああ」
「アンジェ、うれしい!!」

 子供のように抱き着いてくるアンドレアを、エドガーは笑顔で抱きとめた。
 人目を憚らずに甘えてくるアンドレアを見て、ポールが絶句している。
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