ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 あのアンドレアがこんな言動をするはずがない。
 さすがにこれは別人だと、ようやくポールは悟ってくれたようだ。

「くっ、覚えていろよ。シュナイダー家を敵に回したこと、いずれ後悔させてやるからな!」

 そんな捨て台詞を吐き、ポールは乱暴な足取りで出て行った。
 互いを隙間なく抱きしめ合ったまま、エドガーとアンドレアはその背を黙って見送った。

「行ったな……」
「行ったわね……」

 戻ってくる様子がないのを確かめて、ふたりで大きく息をつく。

「それにしても危なかったな」
「ええ、本当に。ごめんなさい、まさかポールがいるだなんて思わなかったから……」

 言いながらアンドレアが腕から離れようとする。
 そこをエドガーは再びぎゅっと抱き寄せた。

「ちょっと、もう演技はいいわ」
「演技だなんてつれないな。俺はアンドレアを本気で愛しているぞ?」
「も、もう! またそんなこと言ってわたくしをからかって」
「照れるアンドレアも可愛いな。さっきみたいにいつでも俺に甘えていいんだぞ?」
「なっ、馬鹿なこと言わないで! あれはライラの口真似をしてみただけよっ」

 頬を朱に染めたアンドレアを、逃さないようエドガーは腕の中に閉じ込める。

「くそっ、なんでこんなに可愛いんだっ」
「だからエドガー! 人の話を聞きなさいったらっ」

 エントランスで延々とじゃれ合うふたりのことを、マリーが生温かい目でいつまでも見守っていた。

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