ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「ポールにこのノートを? わざわざか?」
「別にポールが可哀そうでお爺様に頼んだわけではないわ。あくまで貸してあげただけだし」
「しかしそんなに気にかけてやることはないんじゃないのか?」

 エドガーはどこか不満そうだ。

「わたくしだってそこまでお人好しじゃないわ。あそこまでコケにされたのよ? 今さらポールが死のうが生きようが、どうなろうと知ったことではないわ」
「だったらどうしてこのノートを貸したんだ?」
「あら、だって」

 アンドレアは目を細め、口元に妖艶な笑みを()く。

「監獄島に行って、すぐ死なれては面白くないでしょう? 少しくらい領地経営の知恵があった方が、小狡いポールなら多少の悪あがきをすると思わない?」
「中途半端な知識を得たところで、長続きするとは思えないが……」
「そうでしょうね。きっとポールのことだから、このノートも碌に目を通さなかったんじゃないかしら?」

 アンドレアはくすくすと笑い声を立てた。
 それこそ心底可笑しそうに。

「あの監獄島がどれだけ過酷な場所なのか、行って初めてポールは痛感したでしょうね。そしてこのノートを真面目に読まなかったことを、今頃は死ぬほど後悔しているはずだわ」
「それであくまで貸し出したのか……」
「ええ、そう。本当にポールを哀れに思うなら、このノートを持たせてズュンデに行かせたもの」

 生きるか死ぬかの瀬戸際で、このノートの知識があればどうにか危機を乗り越えることもできたはずだ。

「だが実際にこのノートは手元にない。その絶望をポールは味わうという訳か……」
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