ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「年上の色気を駆使して、ライラよりも先に子を作ってしまうのはどう? その手の知識ならたくさん伝授できてよ?」

 いたずらな笑みを浮かべ、エリーゼがウィンクを飛ばしてくる。
 複雑な顔になったアンドレアは、それでも事実を告白するしかなかった。

「わたくしたち、ずっと白い結婚を続けているの」
「えっ? この三年間、一度も?」
「ええ」

 ため息交じりに頷いた。
 結婚当時ポールは十八歳、アンドレアは二十三歳だ。

(ポールは伯父様を亡くしたばかりだったし、わたくしもいきなり領地経営を任されてそれどころではなかったし……)

 ずっと弟のような存在だったこともあり、ポールがその気になるまではと夫婦の営みは後回しになっていた。
 年上とはいえ、男性経験のないアンドレアだ。自分から誘いをかけるなど、思いつきもしなかったのが実情だ。

「そう……」

 責めるでもなくエリーゼは思案顔になった。

「ね、だったら一度国王様に相談してみては?」
「でもお爺様はご病気で臥せっておいでだし……」

 それもかなり病状がよろしくないようだ。

「手紙だけでも送ってみましょう? このままではあまりにもアンドレアが不憫だわ」

 国王宛の手紙は、孫娘からといえど必ず検閲が入る。
 シュナイダー公爵家の威信にも関わるので、事情をそのままそっくり書くわけにもいかなかった。
 事が公になるとケラー侯爵家もただでは済まされないだろう。
 そうなると嫁いできたエリーゼも巻き込まれることになる。

「そうね……少し考えてみるわ」

 病床の祖父にも負担をかけたくなくて、アンドレアは消極的な言葉を返した。

 話を聞いてもらえただけで、心が軽くなった気がする。
 気持ちを切り替えて、アンドレアはもうひとつの懸念を口にした。

「ところで、エドガーは今どうしているの? ライラの件はもう耳に入っているのかしら……?」

 エドガーはエリーゼの弟だ。
 シュミット侯爵家の跡取りであり、アンドレアの元婚約者だった。
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